Sustainable Apparel Insight

BCIが再生型農業基準へ移行、綿花の調達と環境表示でアパレル企業が見直すべき三つの点

BCIが再生型農業基準へ移行、綿花の調達と環境表示でアパレル企業が見直すべき三つの点

ニュースの概要

Better Cotton Initiative(BCI)は、これまでのサステナブル(持続可能)な綿花の基準を、再生型農業を軸にした仕組みへ正式に切り替えたと発表した。新基準は、地域ごとの気候や土壌に合う農法を選ぶこと、土壌・水・生物多様性について継続的な改善目標を置くこと、そして農家の技術力を底上げすることを求める。守るべき禁止事項の確認から、畑の状態を良くし続ける取り組みへと、評価の軸が動いた形だ。BCIのプログラムは世界の綿花生産の2割超をカバーしており、アパレル企業の原料調達や環境表示のあり方にも影響が及ぶとみられる。

引用元: Better Cotton Initiativeが再生型農業基準へ移行、世界の綿花生産の20%超をカバー(Home Textiles Today)

分析・見解

「害を減らす」から「畑を良くする」へ軸が動いた

従来のサステナブル基準は、農薬の使い過ぎや水の浪費といった悪影響を減らすことに重点があった。再生型農業(=土を傷めず、むしろ土の力を回復させる農法)は、そこから一歩進み、土の有機物量や水を蓄える力、畑にすむ生き物の多さを実際に高めることを目指す。減点方式から、改善を積み上げる方式への転換である。

実務の面では、農家に求められる記録の質が変わる。作付けの履歴や土壌検査の結果を残し、翌年と比べる作業が必要になる。スマートフォンで入力できる記録の仕組みや、現地の指導員の育成が追いつくかが、制度の実効性を左右する。

地域ごとに手法が違う以上、比べにくさが最大の論点になる

綿花の産地は多様だ。インドやパキスタンの小規模農家もあれば、ブラジルやオーストラリアの大規模農場もある。雨に頼る畑と、水路で水を引く畑でも事情は違う。休ませる畑を草や豆で覆う被覆作物が効く土地もあれば、水不足の解消が先という土地もある。BCIが地域の条件に合わせる方式を採ったのは現実的である。ただし、その分「何をもって再生型と呼ぶか」を産地間で横並びに比べにくくなる。ここが信頼性の核心になる。

たとえば同じ「被覆作物を導入した」という報告でも、乾燥地と湿潤地では意味が違う。数字を単純に平均すると、実態を見誤るおそれがある。

20%超の規模が、他の認証や調達方針を動かす

食品分野では、大手メーカーが再生型農業を調達方針に掲げ、小麦や大豆の産地支援を広げてきた。同じ流れが綿花で強まれば、有機認証やほかの民間基準も、土壌の成果を示す指標を取り込む必要に迫られるだろう。有機綿花は世界の生産量の1%前後にとどまるとされる。規模で見れば、BCIが2割超を動かす意味は大きい。

土の変化は遅く、数字で語れるかが信頼の分かれ目

土壌の改善は一年では測れず、天候でも数字がぶれる。そのため当面は、成果よりも取り組みの過程を評価する運用になりやすい。一方、欧州を中心に環境表示の根拠を厳しく問う流れが強まっている。過程の評価を、消費者向けに「再生」と言い切ってよいかは別問題だ。

もう一つの見方がある。移行にかかる費用を誰が負担するかである。農家が単独で背負えば、小規模農家ほど参加を諦める。買い手が価格の上乗せ(=プレミアム)で分け合う設計が欠かせない。基準の側が測定方法を公開し、数年単位で成果を示せるかが問われる。

ビジネスへの影響

調達部門は、産地情報と改善目標の把握から始める

まず自社が使う綿のうち、BCI経由の割合と産地を洗い出す。次に、取引先の紡績・生地メーカーへ、産地ごとの改善目標と進み具合を聞く体制を作る。BCIの綿は、物理的に混ぜて流通させ、購入量に見合う分を帳簿上で割り当てる方式を基本としてきた。そのため「この服の綿が再生型の畑のもの」とは言えない点に注意したい。あわせて、在庫の多い定番品から順に切り替え計画を立てると、混乱が少ない。

環境表示は、言える範囲を決めてから出す

店頭やサイトで「再生型」と掲げる前に、根拠となる基準名、対象範囲、確認できる成果を社内で整理する。「BCIの基準に沿った綿を調達」と事実を書く方が、「地球を再生する服」といった大きな言葉より安全である。表現は法務や品質保証と一緒に点検したい。社内の説明資料にも同じ言葉を使い、営業と広報で表現がぶれないようにする。

海外向けの販売では、地域ごとに表示の規制が異なる。輸出先の規則を事前に確認しておく。

中小企業は、契約の文言と価格の説明を準備する

小規模なブランドや商社でも、仕入れ先との契約に環境配慮の条件が入る場面は増えるだろう。移行の費用は最終的に価格へ響く。値上げ幅を説明できる資料と、数年単位の調達計画を用意しておけば、交渉で主導権を保ちやすい。自社の取り組みを年に一度の報告として公開しておくと、数字の根拠を求める取引先への備えにもなる。

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