古着が拓くファッションの未来
はじめに
環境省の調査によると、日本では年間約50万トンの衣類が廃棄されています。ファストファッションの普及とともに、着用回数が減少した服が大量に処分される現状は、アパレル産業が抱える深刻な課題の一つです。こうした背景から、廃棄衣料を「未来の素材」として再活用する取り組みが国内外で加速しています。
本記事では、古着が拓く新たなファッションの可能性、特にケミカルリサイクルとアップサイクルという二つのアプローチを中心に、最新の取り組みと消費者が取れる行動について解説します。
背景と現状
アパレル産業における廃棄問題は、日本だけでなく世界規模で深刻化しています。環境省「サステナブルファッション」特設サイトによれば、国内では年間約50万トンの衣類が廃棄されており、一人当たりに換算すると毎年約4kgに相当します。また、世界全体でもアパレル産業は全CO2排出量の約10%を占めると試算されており、繊維の約73%が埋め立て処分または焼却されているとされています。こうした現状に対し、古着を単なる「使い古しの物品」ではなく、新たな価値を持つ「資源」として捉え直す動きが加速しています。
古着が未来の素材になる可能性は、大きくリサイクルとアップサイクルの二つの方向性から広がっています。例えば、日本環境設計が展開するBRING™は、回収した使用済み衣類をケミカルリサイクルによってポリエステル原料に分解し、新たなポリエステル繊維として再生する技術を実用化しています。これまで廃棄されていた繊維が高品質な原料として循環する仕組みは、サーキュラーエコノミーを実践する先進事例として国内外から注目されています。
具体的な取り組み
もう一つの重要なアプローチが「アップサイクル」です。古着やデッドストックの生地を素材として、新しいデザインのアイテムへと転換するこの手法は、単なる再利用にとどまらず、素材に新たな価値とストーリーを付加します。例えば、廃棄予定のデニム生地をバッグやジャケットに仕立て直す取り組みは、国内外の複数のブランドで実践されています。さらに近年では、古着をデジタルスキャンして3Dモデル化し、AIを用いて新しいデザインを提案するスタートアップも登場しており、クリエイティビティとサステナビリティを融合させた新世代の取り組みとして注目されています。
消費者の行動もまた、アパレル産業を変える重要な力です。古着を大切に着続けること、リサイクル回収に参加すること、アップサイクルされたアイテムを選ぶこと——これらは一見小さな選択に見えますが、集積すると産業全体に大きな影響を与えます。サプライチェーンの透明化が進み、購入する服一着一着がどこで誰の手によって作られたかが明確になれば、消費者はより情報に基づいた選択が可能になります。古着が拓く未来とは、作り手・販売者・消費者が連携してはじめて実現するものです。